BMIだけでは測れない「中心性肥満」はどうチェックする?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 BMI(体格指数)が標準でも「中心性肥満」があると、総死亡率と心血管疾患死亡率がどちらも高くなることを示唆するデータを、米メイヨークリニックのK・R・サハキアン氏らが医学誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」(電子版)で発表した。

 今回の研究は米国の国民健康栄養調査によるもので、18~90歳の成人1万5184人を対象にしたもの。肥満のパターンをBMIおよびウエスト/ヒップ比で定義し、死亡率と心血管死リスクとの関係を検証した。

 すると、体重は正常でも「中心性肥満」の人は長期生存率が最も低かった。たとえば、BMIは正常だが「中心性肥満」の男性は、BMIが正常で中心性肥満でない男性と比べると、死亡リスクは1.87倍高かった。

 文字通り「中心性肥満」のことだとすると、〈囲み〉にあるように“一般的な話”にはならないが、この研究では、日本語訳の「中心性肥満」が、内臓に脂肪が付いて腹部が出ている「内臓脂肪型肥満」を指していることも考えられる。いずれにしろ、ここで注目したいのは、肥満の捉え方が大きく変化しているということだ。循環器と糖尿病の2つの専門医資格を持つ「銀座泰江内科クリニック」の泰江慎太郎院長が言う。

「肥満かどうかはBMIだけでは測れないというのが、最新の肥満の考え方です。BMIが標準でも、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高い“隠れ肥満”として対策を講じなければならない人がいます。むしろ日本人をはじめアジア人は、欧米人と比べてその割合が多い」

 日本肥満学会の判定基準では、BMI25以上が肥満。しかし、BMI22~24の本来は標準体重と判定される人にも、血液検査などをすると高血圧、高血糖値、脂質異常などが見られるのだ。「自分は肥満」という自覚がない分、かえって厄介かもしれない。

■“よい肥満”と“悪い肥満”

 では、どこでチェックすればいいのか? 泰江院長は2点を挙げる。

「半年間を振り返り、『体重が3キロ以上増えた』『ズボンがきつくなり、ベルトの穴が2つ以上大きくなった』のどちらか、あるいは両方に該当するようなら要注意です。そもそも肥満には、生きていくために必要な脂肪が多い“よい肥満”と、心血管死リスクを上げる“悪い肥満”の2つがあります。悪い肥満は急激に体重が増えやすく、お腹に脂肪が付きやすいという特徴があるのです」

 もし該当するなら、体重を落とさなくてはならない。その方法も、以前とは大きく変わっている。注目すべきは、耐えたり我慢したりをほとんどしなくていい点。

「カロリー減ではなく、何を食べるかが大切。積極的に取るべきは食物繊維です。今の季節であれば、野菜、キノコ、海藻、そして豆腐などの大豆食品を入れた鍋がいい」

 空腹をじっと我慢しなくてもいいのだ。

「運動」も、大上段に構えない。

「NEAT(非運動性活動熱産生)といって、日常的な動作を増やせば、週に数回ジムに通うよりもエネルギー消費がいいことが注目されています。私は“運動をする”ではなく“活動を高める”と呼んでいます」

 座るより立つ。会社ではコピーやファクスは自ら取りに行く。内線電話で話すのではなく、直接席まで行って話す。日常で体を動かすならなんでもいい。重要なのは、続けることだ。

「患者さんにお勧めしているのは、今の歩幅より靴一足分大きく歩くこと。スピードも速くなり、活動量がより増します」

 今日から始めよう。

▽中心性肥満とは
 副腎皮質ホルモンの分泌異常で引き起こされる病気「クッシング症候群」の症状のひとつ。お腹が出て胴体は太いが、手足は細くなる。クッシング病は難病指定されていて、患者数は多いとはいえない。

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