クリップなら、誰もが比較的簡単に実施できるうえ、術後の脳梗塞予防に有効であるというエビデンス(科学的根拠)も出てきています。さらに、心臓の手術に付随して行うのではなく、「脳梗塞を予防するためだけに、胸腔鏡を使った小切開手術を行う」という新しいジャンルの治療も行われているのです。
こうしたクリップを使った閉鎖術が日本で普及するためには、まず、使用するクリップが保険で承認されなければなりません。しかし、新しい機材は高価なので、簡単には承認されないでしょう。その点、われわれが行っている左心耳縮縫術は糸1本で済むので、費用は1000円程度です。
より安価に同程度の有効性が望める方法があるなら、健康保険サイドからはそちらが推奨される可能性が高いといえます。
今後、もっと安価で安全かつ確実なクリップが登場すれば、その方法が主流になってくる可能性はあります。しかし現在の日本では、明らかな根拠がないと脳梗塞といえど予防目的の治療は認められないので、糸1本で縫えば済む左心耳縮縫術を心臓手術に付随して行うという形が、最も安全で受け入れやすい方法ではないかと考えています。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」