医療数字のカラクリ

がん患者に見る「雨乞い効果」と「治療効果」

 甲状腺がんや前立腺がんのように進行が遅いがんでは、1年くらいでは死なない人が多く、こんなデータはいくらでも出せます。また、進行の速いがんであっても、治療をして最終的に生き残った人だけを後から選んでデータにまとめれば、1年後の生存率は100%と示すことは簡単です。

「がんは放っておくと必ず死ぬ」という思い込みがあり、「治療をするとそのおかげで長生きできた」と勘違いしやすい。雨乞いとは異なり、ウソを見破りにくい状況があります。そこにつけ込んで、まったく効果がない治療をあたかも大きな効果があるかのように見せかける人たちがたくさんいて、がんの患者さんを狙っているのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。