毎日飲んでいる薬の量を、自己判断で勝手に調節するのは危険です。何をいまさらと思われるかもしれませんが、薬局では、「飲んでも効かないから追加で飲んだ」「もう治ったから途中でやめた」「前に途中でやめた薬を同じ症状だから飲んだ」「インターネットや薬の説明書を見て自分で判断して飲んだ」といった話をよく耳にします。
先日は、「薬を飲み忘れて、少し残っていた。飲み忘れたことを先生に怒られたくない。残っていた薬を受診日までに飲み切るよう、毎日2倍にして飲んでいた」という患者さんがいらっしゃいました。ご自身で薬を管理されている高齢者は特に危険と感じます。
他にも、「高齢者が睡眠薬を飲み過ぎてふらつき転倒、骨折してしまった」とか、「ぜんそくの薬を症状がつらいからと飲み過ぎて、嘔吐(おうと)や頭痛だけでなく、けいれんを起こして救急車で運ばれた」といった危険なケースもありました。
市販されている胃薬でも、服用量や使い方を間違えれば、幻覚や錯覚などの症状が起こることがあります。病原菌を抑える抗生物質は、途中で服用をやめたり、勝手に飲む量を調節すると、耐性菌という薬を分解する能力を身につけた菌が発生する危険もあります。全世界で新しい抗生物質の開発のスピードが滞っている中、いま普通に治療できる肺炎などが、将来、治療困難な病気になる可能性もあるのです。
薬に副作用の危険性はつきものですが、薬の用法や用量は、安全に使えるように数々の試験を行って決められています。自分で調節すると、副作用を招くような事態になりかねません。専門家の指示を守って使用することが、短期的にも長期的にも安全で効果的な医療を受けられることにつながるのです。
危ない 薬の勘違い