「最初のきっかけは、善玉ホルモンであるアディポネクチンを欠損させたマウスに大腸がんを発現させると、正常なマウスに比べて大腸がんが大量にできるという発見でした。アディポネクチンが大腸がんの予防因子になると考えたのです」
アディポネクチンの作用として、AMPキナーゼというエネルギーセンサーを活性化させ、がんのほか、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果がある。しかし、アディポネクチンを直接上昇させるのは難しい。糖尿病の治療薬であるメトホルミンがAMPキナーゼを活性化させることから、代わりにメトホルミンを投与してはどうか、と考えられた。
そこで大腸がんのマウスにメトホルミンを混ぜた餌を与えると、大腸がんが減った。少人数の臨床試験では、メトホルミンを投与したグループは、大腸がんのマーカーが著しく低かった。そこで、今回の結果を得た臨床試験が行われた。