薬に頼らないこころの健康法Q&A

疲労感受センサーが損壊 被災者の“予想外の元気”に要注意

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 被災地に親族・知人がおられる方は、さっそく現地に電話をかけたことでしょう。安否確認、お見舞い、避難所情報。そうしたやりとりをしていると、不思議なほどに元気な人がいたことにお気づきかもしれません。

「あんな被害に遭ったのに、大したものだ」と驚かれた人もおられるのではないでしょうか。自宅が倒壊した。家の中が泥だらけになっている。会社から帰れなくなった。避難所暮らしを強いられている。大変そうだ。それで、電話をかけてみたら、電話口から予想外に元気な声が聞こえてきた。安心しつつも、少々、拍子抜けしたかもしれません。

 しかし、この「予想外の元気よさ」は要注意です。震災直後から、被災者のなかに「全然疲れを感じない」人がいます。十分な睡眠もとっていないのに、一日中がれきの撤去、住居の片づけ、汚泥の除去、落下物の処理や、親族との連絡に走り回っているのに、疲れない人がいます。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。