手術と同時に、薬剤によって冠動脈の動脈硬化が進むリスク因子を減らす治療をしているわけですから、これだけで、冠動脈バイパス手術を併用すると明らかに効果的だとはいえないのです。
また、虚血性心筋症が急速に進行してしまうような患者さんを、あらかじめ予測できないこともネックになっています。
たとえば、糖尿病や人工透析を行っている患者さんの中には、冠動脈バイパス手術をして心臓への血行を再建しても、どんどん心臓の筋肉がダメになっていく=虚血性心筋症が進行していく人がいます。
そうした患者さんに対し、がんの腫瘍マーカーのように手術の前に血液検査をして、「このマーカーがあるから心臓の働きがどんどん悪くなっていきますよ」と予測できる診断法があれば、積極的に冠動脈バイパス手術を行う意義は大きいでしょう。しかし、現状ではそうかどうかが分からないため、患者さんに負担をかけるだけの無駄な手術になってしまう可能性があるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」