身近な薬の落とし穴

葛根湯で体力消耗? 漢方薬を飲んで眠れなくなった患者も

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 風邪といえば「葛根湯」、初期のインフルエンザといえば「麻黄湯」というように、一般でも漢方薬は頻繁に使用されています。そして、多くの人が「漢方薬は安全で害がないもの」だと考えています。

 たしかに、漢方薬は自然由来の動植物が原料であり、西洋薬に比べると安全性が高いものが多いといえます。しかし、使い方を間違えると危険な副作用が起こるのです。

 葛根湯は、自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こりなどを伴う、比較的体力のある方の風邪の初期に使用されます。つまり、「汗をかいていないこと」「比較的体力がある人」「風邪でも初期であること」が条件です。

 葛根湯には「麻黄」という生薬が含まれています。麻黄には、体を温めたり、汗を出させる作用があり、この作用によって風邪を治すと考えられています。しかし、すでに汗をかいている人が葛根湯を使用すると、体が温まり過ぎるなどして交感神経が興奮した状態になります。そのため、のぼせ、動悸、不眠などの症状が起こる場合があるのです。

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中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。