病気に潜む「脳の異常」

「ランナーズハイ」は危険な兆候 脳内麻薬が疲労感を隠す

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 過労死はいまや大きな社会問題だが、なぜ人間は疲れているのに死ぬまで働き続けるのか? それは脳の仕組みに原因があるという。

「過労死があるのは人間だけです。それは、脳が発する『疲れた』とのシグナルに対し、他の動物と違って疲労感を隠す仕組み(マスキング作用)があるからです。ほかの動物にはみられないほど発達した前頭葉のせいです。意欲や達成感をつかさどる前頭葉が、眼窩前頭野が発する疲労感というアラームをマスキングするのです」

 こう語るのは大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授で、「東京疲労・睡眠クリニック」(東京・新橋)院長の梶本修身医師だ。

 実際、仕事にやりがいや達成感を感じて無理を重ねてしまう、という経験は誰しもあるはずだ。長距離ランナーが経験する「ランナーズハイ」という高揚感もまた、疲労感のマスキング作用にほかならない。

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