医師語る 「こんな病気で死にたい」

理想は自然死 飲まず、食わず、悔いず 眠るように

石飛幸三さん(C)日刊ゲンダイ

 自然死の遺体は白く細身で美しい。一方、病院で延命の末に亡くなった遺体は両腕に点滴針の黒ずみが残り、体全体が白くぶよぶよしています。私には、見た目の差は苦しみの差としか思えません。

 では、自然死はどのようなプロセスをたどるのでしょう? 人は年を取り体が衰えてくると「移動」「排泄」「摂食」の能力が落ちていきます。

 いまわの際が近づいてくると、心臓の働きが弱まり、血圧が60以下に下がります。心臓から遠い順に血液が届かなくなり、手足が冷たくなり、肌の色が変わります。しかし、生きていくための最も原始的な脳幹の呼吸中枢は最後まで頑張ります。遂に麻痺して呼吸が乱れます。最期は下顎呼吸を行います。これは下顎がガクッと下がって普段とは違う筋肉を使った補助呼吸です。このときあえぐように見えるため、家族は「苦しいのではないか」と心配されますが、問題ありません。この時点では本人は苦しみを感じる状態ではないのです。

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