秋が深まると増える「夜間頻尿」 3つの原因と防止法

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「朝晩の気温が下がってトイレが近くなった」「最近、夜中にもよおす回数が増えた」――。秋の深まりとともにおしっこの悩みを抱える中高年も増えてくる。なぜ、気温が下がるとトイレが近くなるのか? どうしたら防げるのか? 日本泌尿器科学会認定専門医で「飯田橋中村クリニック」(東京)の中村剛院長に聞いた。

「主な原因は3つです。ひとつは夏と比べて汗や水蒸気として体から出ていく水分が減ったこと。2つ目は気温が下がると体温を保つために末端の血管が縮小して血液量が増える分を、尿として体外に排出するため。3つ目は寒さが刺激となって、おしっこを出そうとする交感神経の働きが活発となるからです」

 実際、冬は夏と比べて1日の尿量は2~3倍に増加する。夏に800~1000ミリリットルだった人が2000~2500ミリリットル程度に増えるのはザラ。排尿回数も多くなり、夏に5~6回の人が8~10回程度に変化する。

「1日の排尿回数が8回以上は頻尿で、就寝中に2回以上排尿する人は夜間頻尿の可能性が高いなどとされていますが、気にする必要はありません。回数に関係なく、トイレが近過ぎて遠くへ出かけられない、夜中にしばしばトイレに立つので寝不足になり昼間の集中力や記憶力が低下するなど、生活に支障が出たら対応すればよいのです」

■骨盤底筋を鍛える

 ちなみにトイレの回数が多いのは、「冷えが強い」「運動不足」「ストレスがある」「コーヒーなどのカフェイン入り飲料や利尿作用のあるビールなどを好む」「降圧剤など利尿作用の強い医薬品を服用」「前立腺肥大」「糖尿病」「尿路結石」「膀胱炎や尿道炎などの細菌感染症」「妊娠中」などの人だ。

「心当たりのある人は、まずは持病の治療とともに生活習慣を改める必要があります。とくに、寝る前は体を冷やさないことが大切です。寝るときに靴下をはく、お風呂で体を十分温める、暖かい飲み物を飲むことを心がける。寝る前にコーヒーなどカフェインを含む飲み物や利尿作用のある薬を取らないようにしましょう」

 ただし、頻尿や夜間頻尿の裏に「前立腺肥大」や「過活動膀胱」といった病気が潜んでいる場合もある。症状が強ければ、頻尿の診断・治療のプロである泌尿器科の医師に相談することだ。

「前立腺は、膀胱の下に尿道を包むように位置する、栗の実ほどの男性特有の臓器です。加齢とともに肥大化して尿道や膀胱を圧迫し、さまざまな排尿障害を起こします。長時間座る人や自転車に乗る人は要注意です。過活動膀胱とは、自分の意思とは無関係に膀胱が勝手に収縮してしまう病気。頻尿や夜間頻尿、尿もれを起こします。これらの病気には、西洋薬以外にもよく効く漢方薬もあります」

 たとえば、膀胱炎による頻尿を八味地黄丸と桂枝茯苓丸などで症状が改善するケースもあるという。

 ちなみに、頻尿対策として、内臓を支える骨盤底筋と呼ばれる筋肉を鍛える「骨盤底筋体操」がある。肛門を締めるなど、尿道の周りの筋肉を鍛えることで、「トイレに行きたい」と思っても我慢できるようにする体操だ。

「この体操は1日4回、3カ月以上継続しないと効果が出にくいため、忙しい人には現実的ではないかもしれません。それなら、“トイレに行きたい”と思っても少し我慢してトイレに立つまでの時間を延ばすことで、貯尿量を少しずつ増やしていくほうがいいかもしれません。また、長時間座ったり、立ったりする人は重力の関係で下半身がむくみ、就寝中に頻尿として表れる場合がある。寝る数時間前にあおむけに寝て、足を心臓より高い位置にして20~30分過ごす『足上げ体操』をするのもいいでしょう」

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