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首都圏の平均寿命は若者の数が多いほど長くなる

たまプラーザ
たまプラーザ(C)日刊ゲンダイ

 市区町村の健康や医療の格差を見ていこうという今回の企画。最初は平均寿命に着目しましょう。といっても全国では広すぎて、むしろあまりピンと来ません。今回は首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)に限定しました。

 表に示すように、男性では川崎市宮前区と横浜市都筑区が82.1歳でトップに立っています。最下位は横浜市中区(77.1歳)で、ちょうど5歳の差があります。都筑区や青葉区は、横浜市の北西部に位置し、川崎市宮前区と接しています。これらの地域は高級住宅エリアとして、また住民の平均所得が高いエリアとしても県内外に名が通っています。

 一方、横浜市中区には神奈川県庁や横浜市役所があり、文字通り神奈川県の中心をなしています。有名な横浜中華街も、このエリアに含まれます。また、川崎市川崎区は東京湾に面して埋め立て地が多く、京浜工業地帯の中心地になっています。多摩川に沿って川崎大師や川崎競馬場や川崎競輪場があるなど、下町の庶民的な街並みを形成しています。

■女性最下位は高齢化率30%の銚子市

 しかし、男性の平均寿命の上位に位置する杉並区や小金井市は、際立った高級住宅エリアではありません。ただ、若者に人気が高く、「住みやすい街」と評価されています。実は宮前区や都筑区・青葉区も、周辺エリアと比べて若者人口が顕著に多いのです。

 これらの自治体だけでなく、全般的に若者が多い自治体のほうが平均寿命が長い傾向がみられます。行政による適度な住民サービスと心地よい刺激のある街、そして若者と日常的に接していることが、長寿の秘訣なのかもしれません。

 女性では杉並区が1位(88.2歳)、銚子市が最下位(84.9歳)です。女性でも、若者人口の多いエリアの寿命が長い傾向がみられます。杉並区の高齢化率(65歳以上の人口の割合)が20%であるのに対し、銚子市の高齢化率は30%を超えています。

 若い世帯が集まる地域は、子供の数も多くなります。ところが、首都圏では保育所をつくろうとしても周辺住民の理解が得られず、計画が頓挫するといった残念なニュースがよく流れます。反対している年配の住民たちは、わざわざ自分たちの寿命を縮めているのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。