役に立つオモシロ医学論文

食後の歯磨きで生活習慣病は予防できる?

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 当欄で、「歯磨きの頻度と心臓病」関連の論文を紹介したことがありました。2010年に英国医師会誌に掲載されたスコットランドの研究で、歯磨き頻度が1日2回の人と比べて、1日1回未満の人では心臓病の発症リスクが1.7倍多いことが示されていました。

 ただし、この結果は海外の人を対象にした研究で、日本人にそのまま当てはまるものではありません。

 そんな中、2016年11月15日付で日本心臓病学会誌電子版に、日本人における歯磨きの頻度と、糖尿病や高血圧などの生活習慣病との関連を検討した論文が掲載されました。30~85歳の1万3070人を対象とした論文で、5年間の追跡調査で、歯磨きの頻度と、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、高尿酸血症の発症が検討されました。

 その結果、毎食後に歯磨きを実践しない人は、毎食後に歯磨きを実践する人に比べて、男性での糖尿病が1.43倍、女性で脂質異常症が1.18倍、統計学的にも有意に高いという結果でした。なお、高血圧や高尿酸血症との関連性は認められませんでした。

「歯磨きの実践が生活習慣病リスクを減少させるかもしれない」という結果ですが、そもそも歯磨きを毎日行う人は健康意識が高く、歯磨き以外にも食事や運動に気をつけている可能性があります。つまり、この結果のみではその因果関係を決定づけることはできません。ただ、常識的には歯磨きの実践に対して健康的なイメージを持つ人も多いでしょう。

 毎食後の実践が望ましいように思えますが、生活習慣病予防という観点からすれば、その頻度にやたら神経質にならなくてもいいのかもしれませんね。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。