看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

いつもと違うが鍵 あまり知られていない抗がん剤の過敏症

 抗がん剤といえば、吐き気や脱毛などの副作用をイメージする方が多いでしょう。しかし、「過敏症」(インフュージョン・リアクション)という副作用は、あまり知られていないように思います。

 正常な体内では、弱い刺激には反応を示しません。過敏症とは、そのような弱い刺激にも強い反応を示す状態のこと。サバや小麦の摂取による蕁麻疹、ハウスダストの吸引による喘息などがあります。

 そして、抗がん剤でも過敏症があるのです。最も注意が必要なのは、初回の投与時です。皮膚のかゆみや赤み、発熱や体熱感、悪寒、呼吸のしにくさや息苦しさ、のどの詰まり感、胸が締め付けられる感じ、咳、腹痛、嘔吐、便意などの症状が見られます。

 点滴で抗がん剤を投与する場合、投与開始からしばらく経った投与途中に起こる場合もあります。さらに、投与した翌日から数日後に過敏症が起こるケースもあります。症状が出てきたらいったん薬剤の投与を中止し、症状への対処と経過観察を行います。

 抗がん剤には過敏症を起こしやすいものがあり、それを使う時は過敏症を予防する抗アレルギー薬を事前に投与します。

 しかし、それで100%過敏症を抑えられるとは限りません。もし、以前に前述のような症状(皮膚のかゆみや赤みなど)が、薬や食品で出てきたことがある場合、抗がん剤治療の前に、医療者に必ず伝えてください。一度も経験したことがない方より、過敏症を起こすリスクが高いからです。

 医療者も過敏症の有無を観察していますが、自己申告が対処をよりスムーズにすることは間違いありません。目立った症状はなくても、「何かおかしい」「いつもと違う」がカギになります。