あの話題の治療法 どうなった?

美容系外科医が「レーシック手術」をダメにした

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 8年前に東京・銀座の眼科クリニックが集団感染事件を引き起こし、「危ない手術」とのイメージがついた近視を治すレーシック手術。いまはどうなっているのか?

「優れた眼科外科医の技術があれば、合併症は起きないで済むし、屈折矯正の十分な知識があれば、レーシックの正しい適応と運用を行えるのです。この条件を満たせば、レーシック手術を『危険な手術』と敬遠する必要はありません」

 こう言うのは白内障や緑内障、網膜剥離などの眼科領域の外科手術で有名な「深作眼科」(神奈川県横浜市=本院と東京・六本木)の深作秀春総院長だ。

 ならばなぜ、レーシック手術は悪いイメージが払拭されないのか?

「レーシック手術が開発されて25年。限られた本当の眼科外科医によって手術されていた頃は問題がなかったのです。ところがお金のにおいを嗅ぎつけた美容外科系の施設が、派手な宣伝で患者を誘導してレーシック手術を手掛けるようになってから、多くの問題が起きるようになったのです」

 美容外科系で手術して合併症を起こした多くの患者が深作眼科に助けを求め来院するという。

「美容外科系の施設では、合併症として白内障や網膜剥離、緑内障などが起きても見つけることも、治療もできません。さらに、老眼の患者にレーシックをして新たな調節力の問題も起こしています。それを『近視が治せる夢のような手術』ともてはやしたマスコミが手のひらを返して『危ない手術』と評価を変え、『価値のある手術』が悪者にされているのです」

 多くの患者は美容外科系施設で良いことだけを聞かされ、「レーシックは簡単」と思い込み、問題が起きてから後悔するケースが多い。

「どんなに良い薬であっても副作用はありますが、手術にも良い点ばかりでなく、ときにマイナスに働くこともありえます。例えば、レーシックを受けるような強度近視の人の網膜は伸びて薄くなっており、わずかな刺激で穴が開いてしまうことがあります。つまり網膜剥離を合併することもあるのです。手術前に網膜の検査・治療が必要です」

■知識と経験豊富な眼科医なら安全

 さらに、眼球への刺激がより少ないフライングスポットタイプの、1回の照射エネルギーの少ないエキシマレーザーを使うのは当然だという。

「廉価な強いエネルギー照射タイプは網膜剥離や白内障なども起こしかねません」

 また、30代後半の老眼年齢になると、徐々に目の調節力が衰える。レーシック手術後に近視が治り遠くは見えるが、老眼でスマホの文字や本が読めなくなることがあるという。

「それを避けるには手術前には調節力の検査が必要ですが、やっていない施設も多い。老眼の始まる30代後半以降は、モノビジョン法で片目だけでも少し近視を残すべきです。50代以降は老眼も進み、白内障が始まる時期で、レーシック自体を行うべきではないと思っています。また、レーシック後は眼圧が低く計測されるので、緑内障患者は進行しても気付かないことも多いのには注意します」

 眼科外科領域全体の深い知識と経験のある腕の良い医師を選べば安全ということか。