数字が語る医療の真実

前立腺がんはがん検診に向いていない

 しかし、50歳で見つかった早期前立腺がんは70歳になっても大して進行していない場合も多く、検診でがんが早期発見されたばかりに、50歳からの20年を前立腺がんとともに暮らさなければいけないという“負の部分”もあるのです。

 もちろん、120歳まで生きたいという人にとって、80歳でも前立腺がん検診を受ける意義はあるかもしれません。また前立腺がんと一口に言っても、進行の速いものもあり、がん検診によって救われたという人もいます。

 しかし、少なくとも「早く見つければ見つけるほどいい」というような単純な考え方は、前立腺がんに対してはあまりに危険です。

 高齢者に多いがん、進行が遅いがんのがん検診は、「利益」に比べて、相対的に「害」のほうが多い可能性が高いのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」院長、「CMECジャーナルクラブ」編集長。自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員。臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「検診や治療に疑問を感じている方! 医療の現実、教えますから広めてください!!」(ライフサイエンス出版)、「逆説の長寿力21ヵ条 ―幸せな最期の迎え方」(さくら舎)ほか。