「多死社会」時代に死を学ぶ

「老衰死」は数年前に予測できる?

晩年の栄養量と体格指数(BMI)の関係(C)日刊ゲンダイ

 高齢者介護とは、ある意味「食べさせる戦い」だ。

「噛めない」「のみ込めない」高齢者を相手にあらゆる努力を惜しまず、チャレンジし、食べていただく。しかし、食べさせてもそれが身にならなければ、介護される本人にとっては苦しみでしかない。

 これまでに話を聞いた2人の医師によれば、老衰死する人は1週間~10日ほど前から水分や食事を一切取らなくなる。それは「食べたくても食べられない」のではなく、「食べたくない」「必要がない」から食べないのだという。

 しかし、老衰死する人の「食べたり、飲んだりする必要がない」時期はもっと前から始まっているのではないか? そんな疑問に答えてくれるのが、東京有明医療大学看護学部看護学科の川上嘉明准教授が作成した研究データ(図)だ。

 国内4カ所の介護保険施設で死亡した入居者131人を対象に、1日の食事量をカロリーベースに換算した数字、1日の水分量、BMI(体格指数)の変化を5年前までさかのぼってデータ分析したもので、対象者は全員が口から食べ、人工的な水分・栄養補給は施されないまま死に至っている。

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