明細書が語る日本の医療

胃がん手術の多い病院 年間100件以上の病院は少ない

がん研究会有明病院
がん研究会有明病院(C)日刊ゲンダイ

 NDBオープンデータには、都道府県レベルでの手術件数までは載っていますが、病院ごとの数字はありません。ただし、病院はレセプトをもとに手術件数等を国に報告する義務があります。

 その情報がDPC公開データとして、インターネットで提供されています。今回はこちらのデータを使って、胃がんの手術件数の多い病院を表にまとめました。

 DPCでは、胃がん手術は「内視鏡」「部分切除」「全摘」という分け方になっています。全国平均では部分切除の45.6%、全摘の19.5%が腹腔鏡、残りが開腹で行われています。

 個別の病院に関する数字はオープンになっていません。

 がん研究会有明病院と国立がん研究センター病院の2つが、すべてのカテゴリーでトップ3に入っています。

 内視鏡手術では静岡がんセンターがトップ。全摘術で第3位、部分切除でも第6位に入っており、これら3病院が日本の胃がん手術をリードしていることが分かります。

■西日本は「府立成人病センター」「広島市民病院」

 西日本では、大阪府立成人病センター(現・大阪国際がんセンター)や広島市民病院などが健闘しています。

 全摘や部分切除は、実績の多い病院で受けたいもの。しかし胃がん手術の集約化は進んでいないようです。

 胃全摘手術を行っているのは全国で1000病院余り(年間3万338件)。しかし、年間50件以上で区切ると142病院、胃全摘の33.8%を担っています。さらに100件以上で見ると数はぐっと減って、わずか15病院。件数にして6.8%に過ぎません。また、部分切除術を行っているのは500病院ほど(年間1万3119件)。年間50件以上は49病院(全件数の26.5%)。実績の多い有名病院を希望すると、かなりの期間、待たされそうです。

 内視鏡手術を行っている病院は約950病院(年間4万3286件)。しかし、こちらも集約化が進んでおらず、年間100件以上は79病院(全件数28.2%)。ただ、内視鏡手術の対象となる粘膜内がんの多くは進行が遅く、放っておくと自然消滅するものもあるといわれています。もしも検査で見つかったら、まずは実績の多い病院を予約しておくのもいいかもしれません。待機中に消滅してくれるかもしれませんし、手術になっても安心できます。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。