肺がん専門医解説 キイトルーダはオプジーボと何が違う?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人が持つ免疫力を呼び戻してがんを退治する「免疫チェックポイント阻害薬」。非小細胞肺がんに対し、「オプジーボ」に次いで「キイトルーダ」が発売されたのが今年2月。この2つの薬は何が違うのか。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医で神奈川県立がんセンター・呼吸器内科の加藤晃史医長に聞いた。

 免疫チェックポイント阻害薬の中でも、オプジーボとキイトルーダは「抗PD―1抗体薬」という種類。がん細胞は、表面に「PD―L1」というタンパク質を出す。

 これが免疫細胞「PD―1」に結合すると、免疫細胞の働きが抑制されてしまう。

 抗PD―1抗体薬は、がん細胞のPD―L1と結合して免疫細胞のPD―1との結合を阻害し、免疫細胞の攻撃力を高める薬だ。

◆抗がん剤なしで使える

「オプジーボもキイトルーダも同じ抗PD―1抗体薬なので、期待できる効果は同じです。大きく違うのは使用方法です。先に承認されたオプジーボは、抗がん剤(分子標的薬を除く)が効かない患者さんへの2次治療の使用が認められていますが、キイトルーダは1次治療、2次治療のどちらでも使えるのです」

 ただし、キイトルーダも使用できる患者の条件がある。肺のがん組織を気管支鏡で採取し、がん細胞にどの程度PD―L1が発現しているか検査をする。薬が効きそうな患者を絞って投与が認められている。

 キイトルーダを1次治療で使う場合はPD―L1の発現が50%以上(全体の約3割)、抗がん剤が効かない2次治療で使う場合はPD―L1の発現が1%以上(同5割弱)の患者が対象になる。

「オプジーボの場合、これまでPD―L1の検査をせずに2次治療で使うことができました。しかし、今年2月に最適使用推進ガイドラインが出て、『非扁平上皮がん(主に腺がん)』ではPD―L1の検査が必要になりました。それで発現が1%以上ならオプジーボが使えますが、1%以下では先に抗がん剤の『ドセタキセル』を使うことになっています」

◆値段は同じだが通院回数に違い

 PD―L1の検査は、一般的には外注(診断薬メーカー)で調べるので、結果が出るまで1カ月くらいかかるという。キイトルーダの用法・用量は、3週間間隔で1回200ミリグラムを30分かけて点滴静注する。オプジーボの1回の用量は体重によって異なり、2週間間隔で点滴静注する。オプジーボの承認時は高額な薬代で話題になったが、いまは両方とも同一で1日薬価は3万9099円だ。

「免疫チェックポイント阻害薬は、よく効く人もいれば全然効かない人もいます。PD―L1発現50%以上の奏効率は4~5割で、オプジーボでは2割は劇的に効きます」

 オプジーボやキイトルーダが使える施設は、日本呼吸器学会の指導医・専門医や日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法指導医・専門医の在籍が必要で、がん診療連携拠点病院や特定機能病院などの要件がある。現在、該当するのは全国600施設くらいという。

◆安全や有効が確認されない独自使用の病院も

 しかし、問題なのは要件を満たさず、ガイドラインにない抗PD―1抗体薬の使い方をしている施設があることだ。

「他の抗がん剤と併用したり、通常より少ない用量で高額な費用を請求したりする施設があります。独自の使用法は安全性や有効性が確認されておらず、副作用で亡くなる可能性もあるので、安易に飛びつくのは危険です」

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