明細書が語る日本の医療

大腸がんでの死亡ピークは80代 長期闘病生活を強いられる

手術件数の表(C)日刊ゲンダイ

 実は40代までの大腸がんの多くは遺伝性といわれています。一度切ってもしばらくすると再発するケースが多いため、何度も手術を受けることになります。もっと上の年齢でも、ステージⅢ以上では再発率が高まるので、手術を2回以上経験する患者は決して珍しくありません。また、広い範囲にがんが広がっている場合は、患者の体力的な負担を減らすために何回かに分けて手術を行うこともあります。ただ何割くらいの患者が2回以上の手術を受けているかは、いまの統計からは分かりません。

 死亡数は新規患者数の3分の1。40代まではさほど命の心配をする必要はなさそうです。患者のピークは70代ですが、死亡のピークは80代以上。つまり、闘病生活を数年間続ける人が多いことを示しています。

「人工肛門」は、がんの位置と大きさ(長さ)によって決まります。大腸は1本のチューブですから、患部を切除した後にその両端をつなぎ合わせることができれば、人工肛門は避けられます。盲腸、結腸、直腸の局所的ながんなら、腸管をあまり長く切り取ることはないので、うまくつなぎ合わせることができます。

 しかし、がんが広範囲に及んでくると、切り取る長さが増え、残った部分をつなぎ合わせることが難しくなります。また肛門付近のがんは、括約筋(肛門を締める筋肉)を一緒に切除する必要があるため、やはり人工肛門を覚悟しなければなりません。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。