クスリと正しく付き合う

納豆を食べても問題なし 「ワルファリン」は代替薬もある

納豆はビタミンKが豊富
納豆はビタミンKが豊富(C)日刊ゲンダイ

 これまで紹介してきたように、身近な食品や飲料の中には薬と相互作用するものが意外とたくさんあります。注意が必要なものから絶対に一緒に摂取してはいけないもの、摂取する時間をずらしたり、量を少なくしたりなどの工夫次第でさほど気にすることはないものまで、さまざまであることがご理解いただけたかと思います。

 今回は、中でも最も有名な飲み合わせについて紹介します。「ワルファリン」(商品名ワーファリン)は血栓・塞栓症の治療や予防に用いられる薬で、「血液をサラサラにする薬」としてよく知られています。ワルファリンと相互作用をする食品中の成分は「ビタミンK」です。ビタミンKはワルファリンが効きすぎた際の拮抗薬としても用いられているほどですので、併用は要注意です。

 ビタミンKを多く含んでいる食品としては納豆が有名で、ホウレンソウやブロッコリーなどの緑黄色野菜、健康食品のクロレラ、青汁にも豊富に含まれています。とりわけ、納豆のビタミンK含有量は高く、1回摂取しただけでもワルファリンの効果が弱まってしまうことが知られています。緑黄色野菜は連続で摂取すると影響が表れます。

 ワルファリンを服用中は上記の食品の摂取をやめればよいのですが、中には「納豆が食べ物の中で最も好き、食べられないなんてとてもガマンできない」という患者さんもいらっしゃいます。そこまで好きなものをやめるのは大変なストレスになりますが、かといって薬をやめるわけにもいきません。そのような場合、納豆を食べても問題ない代替薬もあります。

 医療人は患者さんのライフスタイルやQOL(生活の質)と治療のバランスを調整するのも仕事です。悩む前に、まずは相談してみてください。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。