決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

聖路加国際病院の医療経費 材料費は前年度比8億6100万円増

昨年は労働基準監督署の立ち入り調査が(C)日刊ゲンダイ

 決算書にはざっくりと「教員人件費(6.3億円)」と「職員人件費(167.6億円)」が記載されています。職員人件費をそのまま病院の人件費として計算すると、医療経費は総額340億円になります。病院としては、差し引き3億円ほどの黒字です。

 ところが昨年、聖路加国際病院に労働基準監督署の立ち入り調査が入り、サービス残業等の実態が明るみに出るなど、さまざまな問題が指摘されました。病院のサービス残業など珍しくはありませんが、聖路加病院は過去2年分の残業代として総額数十億円を支払ったといいます。さらに救急車の受け入れを減らし、今年6月からは土曜日の外来診療を大幅に縮小するなど、病院業務の縮小を余儀なくされています。

 国内外から高く評価されているセレブ病院は医師をはじめとする職員たちの“自己犠牲”で成り立っていたというわけです。今後ともセレブ路線を踏襲するためには、入院・外来とも患者数を減らす必要があります。ただ、セレブ路線を捨ててしまうと、周辺の病院との差別化が難しくなってしまいます。聖路加病院は大きな曲がり角に来ているということなのでしょうか。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。