全国の医師が処方した薬 ベスト10

【降圧剤】処方量トップの石川県は1人年間1000錠以上

石川県は鹿児島県の2.3倍
石川県は鹿児島県の2.3倍(C)日刊ゲンダイ

 都道府県別に見ると、降圧剤をもっとも多く処方しているのは東京都(5億8000万錠)、大阪府(3億9000万錠)、神奈川県(3億8000万錠)、愛知県(3億1000万錠)の順。少ない方は鳥取県(2700万錠)、佐賀県(3900万錠)、福井県(3900万錠)などとなっています。とはいえ人口の多い大都市で処方量が多く、人口が少ない県の処方量が少ないのは当たり前。患者1人当たりの処方量を比較する必要があります。

 厚生労働省の「平成26年患者調査」には、全国の総患者数(高血圧で継続的に病院にかかっている患者の人数)しか載っていませんが、「患者調査」の他の数字と、厚生労働省が定めた公式を使って、各県の総患者数を計算することができます。また県ごとの降圧剤の処方量は、NDBオープンデータに載っていますから、これらを使って各県の患者1人当たりの処方量が出ます。<表>にその結果をまとめました。

 降圧剤をもっとも多く処方しているのは石川県でした。高血圧の総患者数は約6万1000人、対する処方数は6100万錠以上。患者1人当たり、年間1000錠を超えています。2位は北海道(841錠)、3位は千葉県(776錠)でした。

 処方量がもっとも少ない鹿児島県は、1人当たり444錠にとどまっていました。石川県の患者は、鹿児島県の患者の実に2・3倍も、降圧剤を多く飲んでいる計算になります。九州の各県は、いずれも降圧剤の処方が少なめです。ちなみに東京都は601錠で、全国平均(605錠)とほぼ等しくなっています。

 種類の違いで見ると、石川県ではARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤)系の薬が多く使われているうえに、カルシウム拮抗剤(Ca拮抗剤)の処方量も多めです。しかし鹿児島をはじめ処方量の少ない県では、Ca拮抗剤はあまり多く使われていません。ARBとCa拮抗剤を併用すると降圧作用が強まることが知られています。ただ、石川県の患者が他県の患者と比べて「とくに血圧が下がりにくい」ということはないでしょう。

 むしろ、生活習慣の改善に力を入れるか、クスリで強制的に下げるか、といった高血圧治療に対する医師の考え方の違いが反映されているのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

関連記事