Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

全摘なら8時間手術 食道がんで化学放射線療法を選ぶ理由

左から中村勘三郎、小澤征爾、桑田佳祐(C)共同通信社

 ステージ3までは、手術が標準とされ、勘三郎さんも手術を受けています。その手術は、外科手術の中でも特に大がかりで、首と胸と腹部の3カ所を開くため、7~8時間に及ぶほど。食道を全摘すると、食べ物の通り道がなくなるので、胃を細い管状にして首のあたりまで持ち上げ、喉とつなぐのです。

 そうすると、胃の働きが失われます。王貞治さんが胃がんの手術後、激ヤセされましたが、食道がんの手術後も体重が大きく減ります。指揮者の小澤征爾さんは15キロも減り、「着られる服がなくなった」とこぼしたそうです。

 効率よく栄養を吸収できるように食べ物を一時的にためて、少しずつ小腸へ送り出すのが、胃の働き。それが損なわれ、激ヤセするのです。食道がんの手術から復帰した歌手の桑田佳祐さんが“ちょいヤセ”で済んだのは、珍しいケースでしょう。

■早期発見には年1回の内視鏡検査が一番

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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