喫煙が健康に与える影響は大きく、喫煙者は非喫煙者に比べて10年ほど余命が短くなるといわれています。また喫煙は、その副流煙がたばこを吸う喫煙者本人のみならず、周囲の人の健康にも影響を与えることが分かっています。
こうしたことを踏まえ、喫煙マナーや禁煙啓発のための取り組みが行政や医療系学会を中心に行われています。特に健康への影響が大きいと考えられる未成年者においては、喫煙防止対策の一環として禁煙啓発ポスターなどが作製され、街頭やたばこ販売店に掲示されていることも多いと思います。
とはいえ、こうした禁煙啓発ポスターは本当に未成年者の喫煙行動抑止につながっているのでしょうか。喫煙そのものについて知らない青少年に対して、こうしたポスターはある意味で喫煙行動そのものに対する情報提供媒体となってしまいます。
禁煙啓発ポスターが青少年にもたらす影響を検討した研究論文が、ニコチンとたばこに関する国際的な専門誌、その名も「ニコチン・タバコ・リサーチ」電子版に2017年12月13日付で掲載されました。
441人の青少年を対象にしたこの研究では、本物そっくりの疑似コンビニエンスストアを設置し、店内に禁煙啓発ポスターを掲示しました。そして、来店した青少年の喫煙に対する意欲への影響について調査しています。
その結果、もともと喫煙に興味を示さなかった人では喫煙意識に変化は見られませんでしたが、以前から喫煙に興味を持っていた青少年では喫煙を始めたいという意識が統計学的にも有意に高まることが示されました。禁煙啓発ポスターの掲示は、その内容や掲示場所についてやや慎重に検討すべきかもしれません。
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