天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓病手術後に要介護にならないためには脳梗塞を防ぐ

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 人生100年時代になり、避けては通れないのが介護の問題です。00年は218万人だった要介護認定者数は、17年には600万人超まで増加しています。心臓疾患は高齢者に圧倒的に多いだけに、中には手術を受けて心臓の機能は回復したのにその後で要介護になってしまう患者さんもいるのです。

 その原因の多くは術後の脳梗塞で、リハビリがうまく進まないと寝たきりになってしまいます。実は心臓手術を受けた患者さんは、手術が完璧だったとしても術後に脳梗塞を起こすリスクがアップします。治る過程で生じる癒着によって、どんなに丁寧に縫合しても心臓の拡張が制限されてしまうため、心臓内で血液がよどんで血栓が形成されやすくなり、脳梗塞の原因になってしまうのです。

 近年は、術後に心房細動を起こし、それが原因で脳梗塞を発症するケースが増えています。心臓手術を受けた患者さんの20~30%に起こるという報告もあります。心房細動は、心臓が細かく不規則に収縮を繰り返す不整脈のひとつで、心機能低下に伴って心臓内で血栓ができやすくなるため脳梗塞につながるのです。

1 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事