慢性痛がつらいなら…BS-POPと2つの質問が治療のポイント

鎮痛薬が効くのは一部
鎮痛薬が効くのは一部(C)日刊ゲンダイ

 腰、肩、膝、首、喉、背中などの慢性的な痛みに悩んでいる。しかし病院に行っても良くならないと諦めている――。ところが、いま、慢性疼痛の治療は大きく変わっている。諦めるのは早い。

「慢性疼痛には3つの種類があります。それは、侵害障害性疼痛、神経障害性疼痛、非器質性(心因性)疼痛です」

 こう言うのは、福島県立医科大学医学部整形外科学講座・紺野愼一主任教授だ。

 侵害障害性疼痛とは、障害によってだれもが感じる痛みで、治療や時間の経過で痛みが改善する。神経障害性疼痛とは、神経系統の損傷で異常なサインが脳に送られ生じる痛みで、本来の痛みが何倍にも増幅されたり、痛みに過敏になったりする。非器質性疼痛は、検査で明らかに分かる異常がなく、ストレスや精神疾患が関係する痛みだ。

「侵害障害性疼痛であれば、NSAIDsなどの鎮痛薬が効きます。しかし神経障害性疼痛や非器質性はNSAIDsに反応しにくい。別の薬や治療が有効です。慢性疼痛の治療では、どの種類に該当するかを的確に診断し、それに応じた治療を行う必要があります」

 ところが、これまでは慢性疼痛の治療に関する正しい情報が医師、患者に伝わっておらず、主にNSAIDsを用いた治療が行われてきた。これでは痛みが十分に消えないのも当然だ。

 一方で厄介なのは、ほとんどの痛みは侵害障害性疼痛、神経障害性疼痛、非器質性疼痛が混ざり合っており、「侵害障害性疼痛が○割、神経障害性疼痛が○割、非器質性疼痛が○割」と明確に分類できないことだ。

「そこでまずは侵害障害性疼痛の治療を行い、それで不十分なら神経障害性疼痛に効く薬を使う。それでも不十分なら非器質性疼痛を疑うといった治療の流れでした。しかしそれでは痛みが消えるまで時間がかかり、患者さんは治療が中途半端なまま別の病院へ行くか来院しなくなってしまう。慢性疼痛をどう治療するかと考えていく中で、いま採用されている方法が次のものです」

■これまで良くならなかった人も改善

 まず、BS―POPだ。非器質性疼痛をチェックできる。

 次に、簡易版Spine painDETECT(SF―SPDQ)だ。紺野主任教授が開発したスクリーニングで、2つの質問に回答し、計算式に当てはめて点数を出す。これで神経障害性疼痛をチェックできる。BS―POPもSF―SPDQもインターネットで紹介されているので、自分でチェックし主治医へ報告するのでもいい。

「非器質性疼痛の割合が大きい人は、音楽でも運動でもおいしいものを食べるでも何でもいいので、好きなことをやる。それによってセロトニンというホルモンが分泌され、痛みが軽くなる。神経障害性疼痛の割合が大きい人は、この疼痛に用いるプレガバリン(商品名リリカ)や抗てんかん薬などが効きます」

 プレガバリンは、服用後1週間以内でふらつきなどの副作用が出現する場合が少なくないので、様子を見ながら少量ずつ服用。2~3カ月で有効か無効かを判断し、無効であれば別の薬を使う。

 ほかにも「ウオーキングやストレッチ、水泳などで体を動かす」「痛みゼロを目標にするのではなく、“やりたいことをできるように痛みを抑える”を目標にする」「“痛いから○○できない”から、“痛みがあってもできることがある”への認識の転換」などが慢性疼痛改善につながることが分かっている。

「今は慢性疼痛が“治る”時代。慢性疼痛の治療に力を入れている整形外科や神経内科をぜひ受診してください」

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