8月中旬に出向いたベトナムでは、4例の手術のほかに国防医科大学の学生と研修医を相手に1時間ほど講義を行いました。私が日本語で話し、通訳担当者にベトナム語に訳してもらう形で、ベトナムの医療の印象や日本の医学教育の実情などをお話ししました。現地の先生方、とりわけ医科大学の学長には熱心に耳を傾けていただけたように思います。
手術と講義以外にも、今回の“遠征”ではもうひとつ狙いがありました。日本の医学生と研修医を留学という形でベトナムに受け入れてもらう計画を進めることです。
前回もお話ししましたが、いまのベトナムの環境は30~40年前の日本を見ているかのような印象です。公衆衛生が不十分で、感染症対策も遅れています。そのため、日本では激減している“過去の病気”がまだたくさん見られます。日本では昭和40~50年ごろに多かったリウマチ性の心臓弁膜症もそうですし、胃がんもそのひとつです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」