佳江さんは決して“闘病”という言葉は使わなかったが、病気に関する知識を吸収しようと懸命に努力していた。「患者よ、がんと闘うな」という本と出合い、慶応義塾大学病院の近藤誠医師(当時)にセカンドオピニオンも託した。
「日々刻々とさまざまな薬が出てきます。妻は薬についても医師に言われたからではなく、ちゃんと調べてから使うようにしていました。今は患者が医療を選ぶ時代なんだと思います。佳江はそうしていましたし、そうでなくては、自分で納得できなかったのでしょう。少なからぬ患者さんが、『先生がそう言うので』と医師の推奨する治療を受けがちですが、それで具合が悪くなると、誰か他人のせいにしたくなるでしょう。後から話を聞いて、『あの薬はダメ』『こっちの治療法がよかったのに』と勝手なことを言う人もいます。佳江は自分で調べた結果、抗がん剤は副作用が強すぎると判断し、くりぬき手術と放射線を選びました」
がん発症の妻にしてあげた10のこと