自律神経がカギ 寒い冬こそ「日光と朝食」で疲労を撃退

寒暖差と乾燥が自律神経を痛めつける
寒暖差と乾燥が自律神経を痛めつける(C)日刊ゲンダイ

 心機一転、仕事始めなのに心身ともにバテ気味でヤル気が出ない……。冬は疲労がたまりやすい季節だけに、しっかり対策を講じたい。

 1月は疲れが取れにくい季節で、回復しないまま疲労が蓄積しやすい。これが続くと慢性疲労となり、心身の不調はもちろん免疫力の低下も招き、感染症にかかりやすくなってしまう。最大の要因は「寒さ」にある。

「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身氏は言う。

「人間には生命を守るために体の状態や機能を一定に保とうとする『ホメオスタシス』という働きがあり、すべて自律神経がコントロールしています。寒い冬はその自律神経が酷使される場面が増えるため、疲労がたまりやすくなるのです」

 人間の深部体温(体の内部の体温)は自律神経の働きによって37度前後に保たれている。暖かい環境では体温を発散させようと血管を拡張させ、寒くなると体温を逃がさないように血管を収縮させて血圧が上昇する。暖かい環境から、急に寒い環境にさらされると、それだけ自律神経が活発に働くことになる。

 寒い冬に暖房の効いた電車やクルマでの移動や、暖かい部屋から気温の低い室外への出入りを繰り返すと、そのたびに自律神経はフル回転を強いられ、疲弊してしまうのだ。

「暖房設備や住宅性能の向上によって、近年は室内と屋外の寒暖差が大きくなっています。室内は20度を超えているのに、屋外は1桁の気温なんてケースも当たり前です。そもそも動物は5度以上の気温の変化に対応する力がありません。自然界にはそこまで一気に環境が変化する場面はそうそう存在しないため、想定されていない。ですから、われわれ現代人が寒い冬に直面する寒暖差に自律神経が追いつかないのです」

 自律神経が疲弊=疲労が蓄積すると、全身に不調が表れる。

 脳、内臓、筋肉などの働きが鈍くなり、頭痛、肩こり、腰痛、冷え、胃腸障害、食欲不振、イライラといった症状をはじめ、思考力が低下する、刺激に対する反応が鈍くなる、注意する力が衰えて散漫になる、動作が緩慢になる、行動の量が低下するなどの変化も来す。そのまま自律神経を酷使し続けて疲労を放置しておけば、病気にかかったり事故を起こしやすくなってしまう。

■寒暖差と乾燥への対策で自律神経の負担を軽減

 寒暖差が大きい冬こそ、自律神経をいたわる必要がある。

「自律神経にかかる負担をなるべく減らすことを心がけてください。室内と屋外の寒暖差を少なくするために、まめに衣服を着脱したり、温かい飲み物を取るなどして調整するのもいいでしょう。とりわけ注意すべきは朝の起床直後です。目が覚めても、自律神経が目覚めるまでは時間がかかります。その状態で一気に自律神経を働かせると負荷が大きくなってしまいます。試運転のために効果的なのが、まずは窓際で日の光を浴びること。気分を前向きにして覚醒を促す神経伝達物質のセロトニンが分泌されます。さらに、しっかり朝食を食べることも大切です。胃を動かすことは自律神経にとってはそこまでの負担ではないので、朝食がウオーミングアップになるのです。反対に、目覚めてすぐに早朝散歩に出かけるのは避けましょう」

 室内の乾燥対策も自律神経を休ませるためには重要だ。

「寝室の空気が乾燥していると、呼吸がしづらくなって睡眠の質が大幅に悪化します。呼吸がしづらいと就寝中に口を開けていびきをかきやすくなったり、喉の炎症も起こりやすくなる。その結果、就寝中も自律神経が働き続けるため、休息できなくなるのです。加湿器などを利用して寝室の湿度を一定に保ったり、保湿のためにマスクを装着して寝るのもいいでしょう」

 なんだか疲れて調子が出ないまま1月を過ごしてしまうと、後悔することにもなりかねない。

 冬は寒暖差と乾燥に注意すべし。

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