Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

私自身がんになって<3>自ら異常を見逃したのは魔が差した

故・菅原文太さん(右)も膀胱がんだった/(提供写真)

 スマートフォンで写真を撮り、すぐに後輩の泌尿器科専門医にメールを送りました。

「泌尿器科 ○○先生 当直の勤務中ですが、自身の膀胱をエコースキャンしてみたところ、添付のように腫瘍と思われる所見がありました。勝手なお願いで恐縮ですが、先生の初診をあす以降、できるだけ早急にお願いしたいと存じます」

 泌尿器科医からはすぐに返事がありました。

「エコー所見を拝見致しましたが、確かに膀胱腫瘍を否定できない所見だと思います。他には、膀胱三角部の隆起の一部を見ている可能性などがあるかと思いますが、左右差があるとすればやはり腫瘍を第一に考えます。いずれにしても膀胱鏡を含めた精査が必要と考えます」

■2年前のエコーにズバリ

 今、振り返ってみれば、一種のリップサービスだったと思います。そのメールには、エコー検査の所見が、がんではない可能性についても触れられていましたから。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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