後悔しない認知症

親にボケ防止習慣の無理強いすると逆にストレスになる

将棋や囲碁もいい(C)日刊ゲンダイ

 最近、テレビを中心にメディアが取り上げる脳トレなどの認知症対策法だが、高齢者のこれまでのライフスタイルを度外視して画一的に効果があるかのように紹介されている。長年、老年精神医学の現場で多くの臨床例に接してきた私自身、その効果については懐疑的だ。

 若いころからそのプログラムに親しんできた人はともかくとして、「認知症予防にいい」からと付け焼き刃的にはじめる高齢者にとっては、効果はきわめて限定的といっていい。そのプログラムの得点はトレーニングによって高まるが、他の知的能力が上がらないことは研究で実証されている。つまり、認知症の症状の進行を回避する可能性は低いと考えるべきだし、高齢の親にとっては大きなストレスになる場合もある。大切なことは脳を悩ませながらも、高齢の親が機嫌よく続けられるプログラムであるかどうかなのだ。

 冒頭で紹介した知人の母親のように活字に親しむことはもちろん、映画、音楽の鑑賞、囲碁、将棋、麻雀、依存症でなければ、競馬などのギャンブルでもいい。

「親の認知症の進行を防ぎたい」という子どもの気持ちは理解できる。だが、大きなストレスを与えるプログラムを強いることは、逆に認知症を進行させる可能性もある。子どもの自己満足で終わってはいけない。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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