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血液サラサラ 旬のサンマは塩焼き以外の調理法で老化防止

サンマの梅煮(手前)と蒲焼き風
サンマの梅煮(手前)と蒲焼き風(C)日刊ゲンダイ
旬を食す(1)サンマ

 文字通り、秋を代表するサンマ(秋刀魚)には数ある魚の中でもDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれています。とりわけ旬の秋には最も脂が乗り、DHAもEPAも豊富です。DHAは脳や目、EPAは血管や血液の老化防止に役立ちます。

 サンマは目が澄んでエラが鮮やかな紅色をしているもの、身が硬く銀色に光っているものを選びます。背が盛り上がっているものほど脂が乗っています。新鮮なうちに塩焼きにして食べたいところですけど、用意したその日に食べられるとは限りませんし、塩焼きばかりでも飽きてしまいます。

 そこで今回は塩焼き以外の調理法を2品、ご紹介します。メインは梅煮です。梅干しと一緒に煮ることによって青魚特有の臭みが消え、梅干しの酸味がうま味に変化するからです。骨も内臓も除かず、ざく切りにして煮込みます。サンマの骨はそもそも軟らかいうえ、梅の酸によってさらに軟らかくなるため、食べるときにさほど気になりません。

 もう一品は、三枚におろして蒲焼き風にしました。蒲焼きというと甘ったるいイメージが強いですけど、山椒と生姜によって味はかなり引き締まります。蒲焼き風も梅煮も冷蔵庫で2日間くらいであれば日持ちします。

 今年はサンマが記録的な不漁といわれていますが、安くなったタイミングで買い、頭とワタを取り除いて冷凍保存しておくのもひとつの方法です。

■梅煮

《材料》
◎サンマ  2尾
◎塩  少々
◎薄力粉  適宜
◎ごま油  大さじ1と2分の1
◎水  1カップ
◎生姜薄切り  大さじ1
◎梅干し 大1個(割いてタネも使う)
◎酒  大さじ3
◎三温糖  大さじ1
◎醤油   大さじ1
◎あさつき  3~4本を小口切り

《作り方》 
(1)サンマはワタごと3~4つの筒切りにし、塩を薄く振り、茶こしなどを通して薄力粉を振る。
(2)フライパンにごま油を熱し、サンマの両面をワタを崩さないように焼く。
(3)土鍋、または厚手の鍋にサンマ、水、生姜、梅干しを加えて煮立てたら、酒と三温糖を加える。
(4)火を弱め、蓋をして時々、サンマに煮汁をかけながら、汁気が半量になるくらいに煮詰める。味をみて醤油を加え、さっと煮立てたら、器に盛り、あさつきをあしらう。

■蒲焼き風 
 サンマ2尾を三枚におろして半分にしたら、全体に薄く塩をして、薄力粉を茶こしを通して両面に振る。フライパンにごま油大さじ1を熱し、サンマを皮側から両面さっと焼きつける。

 皮を上にして水2分の1カップ、生姜のすりおろし大さじ1、酒大さじ2、みりん大さじ2を加えて、煮汁をかけながら、汁気がひたひた以下になるまで煮詰める。味をみて醤油大さじ1と2分の1を加え煮絡める。器に盛り、好みで粉山椒をあしらう。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

サンマに生姜梅干しなどを加えて煮立てたら酒と三温糖を加えて(作り方③)
サンマに生姜梅干しなどを加えて煮立てたら酒と三温糖を加えて(作り方③)/(C)日刊ゲンダイ
栄養を貯蔵した季節の恵みで血液サラサラ

 食欲の秋。秋に食べ物がおいしくなるのにはちゃんと生物学的な理由がある。植物も魚も動物もみな、来るべき冬に備えて栄養を蓄積・貯蔵し、また次世代をつくるための種や実をみのらせ、あるいは卵をはらむ。脂が乗ったサンマの旬はまさにこの季節の恵み。

 私は米国での研究生活が長かったせいで、食べ物の「旬」を大切にする日本人の食文化をたいへんすばらしいものだと深く感じている。春にはタケノコや芽吹きたての山菜、初夏にはカツオ、夏はアユ、秋には、もちろん今回のサンマの他、たとえばマツタケ、冬には鍋物、といった「旬」感覚が、アメリカの食生活にはかなり乏しい。

 小泉進次郎氏がNYに行ってまず食べたというステーキは一年中どこにでもあって、特に旬という時期もない。旬があることがどれほど食文化を豊かにしていることか。いま一度噛み締めたい。

 さて、サンマは煮ても焼いてもおいしい。身がほろほろと外れやすいので子どもでも食べやすい。小さいうちから日本の食文化をしっかり味わっておいてもらいたいもの。もちろん栄養価的にもすぐれており、青魚なので、心臓血管系の疾患を予防する不飽和脂肪酸(いわゆる血液をサラサラにする成分)に富んでいる。

 ちなみに、秋が食欲の季節であるもうひとつの理由は、私たち人間自身も生物だからである。寒い冬に備えて、豊富な栄養をたくさん摂取しておきたいという本能はいまだに私たちの遺伝子の中に刻み込まれている。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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