がんと向き合い生きていく

医師が命を助ける努力を怠れば命が軽くなり過ぎてしまう

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 70年前の戦争の時に「おまえたちの命は羽毛よりも軽い」と言われ、神風特攻隊の若い命が失われました。それから約30年たって日航機ハイジャック事件が起こり、当時の福田赳夫首相が「人ひとりの命は地球よりも重い」と述べ、超法規的措置として犯人グループに身代金を支払い、収監されているメンバーなどの引き渡しを決めました。

「人ひとりの命は地球よりも重い」

 死刑制度について問うている加賀乙彦の小説「宣告」にもそうあります。かつての「羽毛の軽さ」から「地球よりも重い」までになったのです。 そしていまは、自己決定権、超高齢社会、生産性のない人間が増えている……などと言われ、何か命が再び軽くなってくるのではないかと気になるのです。

■生きていればこそ何かで喜びを感じることができる

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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