胃の不調の原因かも…医師も治療に悩む「胃弱」とは?

胃の不調を訴えて胃カメラ検査をした人の10人中7〜8人が異常なし

 忘年会シーズン真っ盛り。飲み過ぎ食べ過ぎで胃が悲鳴を上げている人も少なくないだろう。だが、この胃の不調、検査をしても何も悪いところが見つからないケースが多いという。どうして胃の調子が悪くなるのだろうか。その対策を探ってみた。

「胃の調子が悪い場合、理由は2つあります。1つは、検査で胃袋に胃潰瘍やポリープが見つかるなど明らかに異常がある場合。2つ目は、検査で何も問題がないが機能的な異常があるケースです」と話すのは、内科・消化器内科を専門にしている「ファミリークリニック ひきふね」の梅舟仰胤(うめふね・ぎょうたね)院長。実は、この2つ目の機能的な異常が圧倒的に多いのだと梅舟院長は言う。

「実際に、診察に来られた方が10人いたら7〜8人はどこにも悪いところが見つかりません。胃袋はキレイで問題はないのにどうも調子が悪いという患者さんがそれほど多いのです」(梅舟院長)

「ファミリークリニック ひきふね」の梅舟仰胤院長
胃によいとされているヨーグルトを摂るのも胃弱対策に

 なぜ、胃に何も悪いところが見つからないのに、不調を訴える人が多いのだろうか。

「実は胃の働きが弱っているからです。これは検査では見つけようがありません。つまり、胃の働きが弱り、何らかの症状が出てしまうのが、機能性ディスペプシアという病気なのです」

 どうしてこういうことが起こるのか。梅舟院長はこう話す。

「代表的なのはストレスですね。冷えや疲れも原因になります。特に寒暖差が激しい今の季節は体力が奪われやすく疲れやすい。また、ホルモンバランス、自律神経、食生活の乱れも胃の働きを弱くします」

 この胃弱に、どんな対処法があるのだろうか。

「改善の大きな柱は2つ。1つは、生活習慣の改善です。ストレスをためない、冷やさない、疲れをためない、暴飲暴食をしないように気をつけて、適度な運動を心がけるようにすることです。2つ目は薬物治療。患者さん一人一人にマッチする薬を処方しています」

 梅舟院長は、この薬物治療で欠かせないのが漢方薬だと言う。

「西洋の薬は数種類しかなく、それで良くなる方もいれば、治らない方もいます。次の一手、次の二手として漢方薬のカードを持っていると治療の幅がぐんと広がるのです」

 セルフケアの方法としては、宴会があったら次の日は胃を休ませることが肝心。胃袋は回復力の強い臓器なので、1日休ませるだけでもずいぶん違ってくるのだそうだ。

「忘年会などで暴飲暴食した翌日はヨーグルトなどの発酵食品を摂るのもいい方法です。最近はいろいろな機能を持った乳酸菌のヨーグルトが売り出されていますので、特に胃によいとされている乳酸菌のヨーグルトを選んで摂るようにするといいと思います」(梅舟院長)

 まずは放置せずに専門医に相談することだ。

“薬膳胃弱鍋”がその対策の一つとして注目されている

 一方、味噌やヨーグルト、甘酒などの発酵食材を使った「発酵鍋」が胃弱対策に良いと言われている。この冬のトレンド鍋としても話題になっている。

 そんな発酵鍋に漢方の考えを取り入れた「薬膳胃弱鍋」が今、注目されている。国際中医師で薬剤師・薬膳師でもある山口りりこ氏が監修し東京・銀座の「薬膳レストランKampos(カンポーズ)銀座」で提供されている秋冬限定のメニューだ。

 山口りりこ氏は胃弱対策についてこう語る。

「漢方では、年末年始に良くある胃痛の原因は胃に熱がこもる『胃熱(いねつ)』の状態と考えています。胃に熱がたまる大きな理由は、食べ過ぎ・飲み過ぎです。また、年末年始の多忙によるストレスや、寒さによる冷えにも胃の働きは影響されます。つまり、今の時期は胃が弱りやすく消化不良を起こしやすいシーズンでもあるのです」

国際中医師で薬剤師・薬膳師でもある山口りりこ氏

 その対策として、冷えを解消し消化を促進するピリ辛い薬膳味噌と、胃の熱をとる魚介出汁の2種類のスープで胃弱対策ができるように「薬膳胃弱鍋」を監修したと言う。

「一つは発酵食材の味噌に熱を発散させる生のしょうがと、温かさを閉じ込める役割の乾姜という2種類のしょうがで、体を中から温めるようにしています。もう一つは、体に潤いを与え、食べ過ぎ飲みすぎなどによる胃痛の原因『胃熱』を取り除くためにヨーグルトを入れています」

 味噌とヨーグルトの組み合わせは、腸内環境改善にもつながるため、便秘解消による美肌や免疫力向上が期待できるそうだ。

 山口氏は季節や体調に合わせて食を考えることが薬膳の神髄だと話す。

「自分の体調に興味を持つことが大切です。冷えているなら味噌を使った温かい料理にするとか、乾燥が気になるようなら体内に潤いをもたらすヨーグルトを食べるとか、自分の体調にあったものを食べるように心がけることが薬膳の考え方なのです」

 たとえば、冷奴には消化を助けるために生姜やネギが薬味でついている。これも薬膳の考え方なのだ。すぐに薬膳生活を始めて、胃弱を解消したいものだ。

関連記事