Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

石田純一はTV番組で余命8年と 肝臓の線維化を知る検査2つ

ワインを2本も空けたら…
ワインを2本も空けたら…

 65歳にして3児のパパの俳優・石田純一さんは、元気がトレードマークですが、お酒が体をむしばんでいるかもしれません。6日放送のテレビ番組「名医のTHE太鼓判!」で「余命8年」と宣告されたことが報じられています。

 番組で人間ドックを受診したところ、肝機能異常が判明し、関連する数値が軒並み基準値をオーバー。慢性的な肝臓への影響を放置すると、肝臓がんに進む恐れがあるそうです。

 報道によれば、時にはワインをボトル2本空けるといいます。これほどの酒豪でなくても、酒好きにとっては他人事ではありません。かくいう私も酒好きで、今回はアルコールと肝臓がんの関係についてです。

 肝臓がんは、B型とC型の肝炎ウイルスに感染して慢性肝炎から肝硬変を経て進むケースが一般的。8割以上を占めています。アルコールによる脂肪肝↓肝炎↓肝硬変から移行するのが、10~15%です。

 脂肪肝でγ―GTPが上がる程度なら断酒して食生活を改善すれば、肝機能は短期間で回復しますが、さらに飲み続けると、肝細胞の破壊と修復が繰り返され、慢性的な肝炎に。軽度の肝炎までなら、ほとんど自覚症状はありませんが、肝炎は問題です。

 肝炎になると、慢性的な炎症で肝細胞が線維化します。線維化を分かりやすくいえば、カサブタのような状態。それが肝臓に広がったのが肝硬変です。

 肝硬変は、線維化が進んで、肝臓が小さく硬くなっています。そうなると、黄疸やむくみ、腹水、吐血などの症状が見られるようになり、アルコール性肝障害の影響は深刻です。意識障害を起こす肝性脳症、静脈にコブができる食道静脈瘤、腎不全、糖尿病といった合併症も発症しやすい。アルコール性の肝硬変も初期なら、断酒で改善が期待できますが、お酒を長く楽しむなら、なるべく軽度の肝炎のうちに節酒するのが無難です。

 アルコールの影響が表れるスピードは個人差があり、一般に女性の方が速い。それを知る手がかりが、実は血小板の数値です。10万個を下回ると、肝硬変の恐れが。血小板の数値低下と肝臓の線維化の進行には、右肩下がりの関係がありますから、血小板の動向は要注意です。

■血小板の数値低下も要注意

 その対策で私は、半年ごとに2つの検査を受けています。ひとつは、エコーで「肝臓の硬さ」と「肝臓に蓄積した脂肪量」を同時にチェックできる肝硬度測定検査(フィブロスキャン)です。肋骨のあたりにプローブを当てるだけ。5分ほどで終わります。

 硬さの正常値は5。17を超えると肝硬変の可能性が高まります。

 もうひとつは、Fib―4 index。肝機能の項目の「AST」と「ALT」、血小板の数値をもとに計算で導きます。(年齢×AST)÷(血小板×√ALT)。ASTとALTは、血液検査で分かりますから、人間ドックなどを受診している方は、結果表にあるかもしれません。それを参考にネットなどで入力すれば結果は分かります。1・30未満は線維化の可能性が低く、それ以上がグレーゾーンで、2・67以上は線維化の可能性が高い。

 ASTやALT、血小板の数値が正常でも、数値が高くなることがあるので注意が必要です。私は、2つの検査結果が悪い時は、酒量を減らしています。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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