がんは陽子線で治す 普通の放射線と何が違う?医師に聞く

筑波大学付属病院陽子線治療センターの櫻井英幸部長(提供写真)

 中高年男性の関心が高い前立腺がんは2018年4月から公的保険の適用となった。

「前立腺がんはX線での放射線治療でも根治可能といわれますが、直腸や膀胱、尿道などの一部に放射線が強く当たるため排尿・排便障害が出る可能性があります。陽子線治療はそれを低く抑えます。筑波大学の成績を含めて両者を比較した研究では、膀胱・尿道の排尿障害がX線治療で5~15%に対して陽子線は3%。直腸障害はX線5%に対して陽子線1%程度でした」

 肺がん治療は放射線照射や化学療法後にオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤を使う。正常細胞を装っていたがんが周囲の細胞に「自分は異物」と目印を提示するようになり、患者自身の免疫力でがんを叩けるようになるからだ。無駄打ちのない陽子線はそれが強く出るという。「通常の放射線による食道がん治療では、心臓や正常な肺組織へ照射がかかるため影響が避けられません。陽子線治療なら、それが最小限に抑えられます。X線治療を施した2つの研究論文(87例と76例)では心毒性10~15%、胸水10%、肺炎4%でしたが、陽子線治療を施した当センター(67例)ではそれぞれ0%、1・4%、0%でした」

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