パンデミックの基礎知識 人間同士の感染を止めても根絶できない

新型コロナ対策でマスクを着用する人々 (C)日刊ゲンダイ

 特異性を形成するもうひとつの要素が「体温」だ。多くのウイルスには増殖するのに適した温度がある。ウイルスは自身を複製するときに宿主である人や動物の酵素群を使うが、それが働きやすい温度があるためだ。

「例えば鳥インフルエンザの増殖に適した温度は、鳥の平均体温である42度と言われています。ウイルスが感染し増殖に必要な酵素が活発になる温度だからです。人間のそれは36度で増殖効率が悪い。だから、鳥から感染したとしてもその後人から人へうつすほどの感染力を持ちえないのです」

 ところが、ウイルスは物凄い速度で変異している。ウイルスによっては1年間で1000代も代替わりしていて、それは人間に例えると約3万年に相当し、クロマニョン人から現代人に進化するほどの代替わりになるといわれている。

 その結果、あるウイルスは変異を繰り返すうちに犬や猫には感染するが人間には感染しない能力を獲得し、別のウイルスは人間だけに感染する能力を持つようになる。中には人間といくつかの動物に感染する能力を獲得する。それが人獣共通感染症だ。A型インフルエンザは最大の人獣共通感染症で、人間、鳥、豚、虎、クジラ、アザラシなどさまざまな動物に感染する。つまり、種を超えて感染拡大していくのだ。その結果、動物によっては、さまざまなウイルスに感染し、体内でさまざまな遺伝子が混ざり合う、混合容器のような働きをすることになる。例えば豚だ。

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