中高年の正しい眠り方

睡眠は年齢によって変化 若い頃のように長時間は必要ない

大事なのは満足度
大事なのは満足度(C)PIXTA

「若い頃のように長時間ぐっすり眠れなくなった……」

 加齢とともに睡眠の悩みを抱えている中高年の方はたくさんいます。それが原因で不眠症になってしまうケースもあるので軽視はできませんが、見当違いの解消法に振り回されて悪循環に陥ってしまう人も少なくありません。中高年には年齢に応じた睡眠対策が必要なのです。

 まず、理解しておくべきなのは「年を取ると長時間の睡眠は必要なくなる」ということです。われわれは加齢とともに基礎代謝量が低下し、日中のエネルギー消費量も低下します。使われるエネルギーが少ない分、体が必要とする睡眠量は少なくなるのです。

 また、脳が必要とする睡眠時間も減っていきます。脳は、昼間に見聞きしてため込んだ情報を睡眠中に整理して記憶を定着させています。それが、年齢を重ねると「過去の経験」をもとに新たな情報をつなぎ合わせて短時間で処理できるようになるため、睡眠時間も少なくて済むのです。

 こうした睡眠の変化は、男性なら55歳、女性は40代を境に表れます。つまり、男性の場合は55歳を越えたら睡眠時間が短くても問題はなく、若い頃のように長時間眠れなくても当たり前なのです。しかし、それを知らない人が多いため、「昔みたいに熟睡できなくなった」と動揺し、寝具や快眠グッズを探し回ったり、無理に長時間眠ろうとして焦りを募らせ、むしろ睡眠の質を低下させてしまいます。あれこれ対策を講じる前に、「年を取ったら若い頃のような睡眠は必要ない」という認識を持っておくことが大切です。

 それでも睡眠に不満が残るという場合、まずは睡眠に対する理想を高く設定しすぎないことを意識してください。

 睡眠を考える上で重要な要素は、①質(深く眠れているか)②日中に眠くならないか(睡眠時間は足りているか)③満足度(本人が満足しているか)の3つです。睡眠の「質」と「時間」に問題がなくても、本人が不満に思っていると睡眠の悩みは解決しません。中高年はこの「満足度」が低いケースが多く、満足度が高くなれば、質や時間が十分でなくても睡眠トラブルは解決する場合が多いのです。

 睡眠に対する理想が高いと、満足度はなかなか向上しません。たとえば、「睡眠時間は8時間が理想的」だと思い込んでいると、早朝に目覚めると「早く起きすぎてしまって眠れない」と不満が募ります。

 先ほどもお話ししたように、中高年は若い頃のような長時間の睡眠は必要ありませんし、日照時間が長くなるこれからの季節はさらに睡眠時間が短くなっていきます。起床して4時間後に眠気がなければ睡眠時間は足りているので確認してみてください。

 また、「睡眠は年齢や季節によって変動する」「睡眠は目的ではなく日中のパフォーマンスを高める手段である」という認識を整理しておけば、満足度の向上につながります。

 次回は睡眠の満足度を高める具体的な「行動」についてお話しします。

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