コロナ禍での熱中症対策

マスク着用に暑熱順化なし…かつてない夏にどう備えるか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「たとえ緊急事態宣言が解除されても、マスクを着けなければいけない状況は当分続くはず。全世界の人が、マスクをした状態でひと夏を過ごすなどという経験は、かつてない事態です。今年の夏に熱中症で倒れる人がどのくらい発生するか、まったく予想することができません」

 こう警鐘を鳴らすのは、帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長で、同大学医学部救急医学講座の三宅康史教授だ。環境省「熱中症予防声かけプロジェクト」の実行委員長も務める、熱中症の第一人者である三宅教授はコロナ禍で迎える前例のない夏において、熱中症の患者が増加する可能性があるという。

「これから本格的に暑くなってくると、暑い屋外でマスクを着けるだけで体にかなりの負担がかかることも予想されます。本来、私たちは冷たい空気を吸うと、温かくて湿った空気が呼気として出ていって、その分、体が冷やされます。しかし、マスクを着けたままだと、まず息を吸う時に暖かくなっているマスクを通過してくるので、暖かい空気が入ってくる。さらに、吐く息がマスクを暖めるので、次に吸い込む空気にも熱が加わる。呼吸によって体を冷やす効果が圧倒的に落ちてしまうことは、確実です」

 さらに問題なことがもうひとつ。長く続いた外出自粛やリモートワークで、この春は日本人の多くが家に閉じこもりがちな生活を送った。それにより、夏を迎えるために必要な暑熱順化が不十分な人が大勢いると考えられるのだ。暑熱順化とは、夏に向けて、体が徐々に暑さに慣れて、汗をかきやすい体質に変わっていくこと。このプロセスを省いて夏を迎えると、熱中症になるリスクが大幅に高まるといわれている。だが、三宅教授は注意を促す一方で、コロナ禍が熱中症にもたらす別の可能性も指摘する。

「コロナの影響で、仕事でも家族や友人付き合いでも、あえて出掛けずに、ZoomやSkype、電話などで済ます傾向が強まっています。猛暑の真昼にわざわざ電車と歩きで知人に会いにいくことが減ることで、熱中症にならずに済む、という可能性も確かにありますね」

 とはいえ、それはあくまでも希望的観測。暑熱順化の遅れとマスク着用が熱中症を増加させる可能性があり、予断を許さない夏が間もなくやってくる。(つづく)

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