出勤再開でうつ急増?「長生き呼吸法」で覚醒スイッチを

(C)RyanKing999/iStock

 緊急事態宣言が解除され、テレワークから職場への出勤を再開した企業が増えている。ようやく在宅勤務のリズムに慣れてきたのに、以前の生活に戻って憂うつを感じている人も多いのではないだろうか。

 SNSでは「満員電車に乗りたくない」「アフターコロナうつ発症」「一生テレワークがいい」といった声も聞こえる。以前は当たり前だった満員電車や会議、会社での面倒な人間関係にストレスを感じている人が多いようだ。

「自律神経を整える『長生き呼吸法』」(アスコム)を刊行した順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、「環境や生活スタイルの変化は、知らず知らずのうちに自律神経のバランスを崩してしまうので注意が必要だ」と話す。

「自律神経は血流や腸内環境、免疫機能などを司っている人体の生命維持装置です。心の健康とも密接に関わっており、心と体をつないでいる神経ともいえます。自律神経は、心身をアクティブにする交感神経とリラックスさせる副交感神経の2つで成り立っていますが、理想は交感神経と副交感神経の両方を高いレベルにすること。すると、心身ともにベストの状態になります」

 しかし、環境の変化でストレスを抱えていると、朝起きても交感神経のレベルが上がらず、「やる気が出ない」「うつっぽい」といったメンタルトラブルに陥ってしまうそうだ。小林氏によると、ゆっくりと深く呼吸をすれば、自律神経のバランスが整い、全身の血流量がアップ。朝からアクティブモードになれるという。

「不安やストレスが強い人は、日常的に浅くて速い呼吸になっている傾向にあります。試しに1分間の呼吸数を数えてみてください。成人の1分間の呼吸数の平均は12~20回です。安静時に20回以上呼吸をしている人は、呼吸が浅くなっている可能性があります。自律神経と呼吸は密接に関わっており、浅い呼吸を続けていると、自律神経のバランスが崩れ、メンタルトラブルに加えて、血流や腸内環境の悪化を引き起こします。これらは、さまざまな生活習慣病の要因にもなってしまいます」

「朝イチおはよう呼吸」のやり方(「自律神経を整える『長生き呼吸法』」/アスコム刊 から)

 小林氏は、呼吸の質を高めるために「長生き呼吸法」を考案した。「長生き呼吸法」には基本のやり方(※第1回の記事をリンク)に加え、シチュエーションに合わせた8つのアレンジメソッドがある。今回はその中から、朝に行う「朝イチおはよう呼吸」を紹介する。

【長生き呼吸法「朝イチおはよう呼吸」のやり方】

①足を肩幅に開いて立つ。両腕を頭上に伸ばして、手首をクロスさせる。
②上半身を右に倒しながら、6秒口から息を吐く
③元の姿勢に戻りながら、3秒鼻から息を吸う
④左も同様に行う

 ※計5セット

「『長生き呼吸法』は『吐く時間を長くする』のがポイント。吐く時間が長いと、横隔膜の動きが大きくなり、自律神経のバランスを整えることができます。また、腸に刺激を与える動きを同時にすることで、質のいい血液を生み出し、全身の血流をスムーズにすることができます。中でも『朝イチおはよう呼吸』は、筋肉の柔軟性を高めて体を目覚めさせるストレッチ効果もありますので、心身がアクティブモードになり、1日元気に過ごすことができるでしょう。朝食前に行っていただくのがオススメです」

「長生き呼吸法」はこのほかにも、「夜のぐっすり呼吸」「集中力アップ呼吸」「肩こり解消呼吸」など、不調や目的に合わせたメソッドがある。いずれも始めたその日から、新鮮な酸素をたっぷり取り込め、森の中にいるような爽快感を味わえる。続けるのが楽しくなってくる。

 職場出勤が再開した人だけでなく、テレワークを続けている人も、主婦も、ぜひ「長生き呼吸法」を生活に取り入れてみてほしい。自律神経を整えて、心身ともにベストな状態で1日をスタートさせれば、どんな働き方でも最高のパフォーマンスを発揮できるだろう。

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