医者も知らない医学の新常識

米国で論文報告 マスクを消毒して再利用するのは有効か?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの感染予防に、マスクが有効なことは間違いがありません。この場合のマスクは、一回着けて外した時には、そのまま捨てて再利用はしない、というのが原則です。マスクの表面にはウイルスなどが付着している可能性があるので、そこに触ってしまったら、手が不潔になってしまうからです。

 しかし、こうした正しいマスクの利用のためには、毎日何枚ものマスクが必要になります。そこで問題になるのはマスク不足です。特に医療現場では、より高性能のマスクを使っていますから、マスク不足はより深刻なのです。

 そこで苦肉の策として考えられたのが、メスなどの医療用具と同じように、マスクを消毒して再利用するという方法です。消毒というのは危険のないレベルまで病原体を減らすことですが、医療現場ではより強力に病原体を減らすことを滅菌と呼んでいます。

 今年の米国医師会雑誌の姉妹紙に、医療用の高性能マスクを2種類の方法で滅菌し、滅菌前後の性能を比較した論文が掲載されました。

 それによると、滅菌法による違いはありますが、滅菌後にはマスクの性能が少なからず低下していました。

 マスクを消毒することは可能ですが、それを新品のマスクと同じと考えることは、危険な場合があるようです。現状、マスクはなるべく新品を使うのが安全なのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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