コロナ第3波に備える最新知識

有効性9割超「mRNAワクチン」はどこまで期待していいのか

米ファイザー社の新型コロナウイルスワクチン(C)ロイター/Dado Ruvic

「今回のワクチンは、新型コロナウイルスがスパイクタンパク質を作るための遺伝情報が書き込まれたmRNAを封入した粒子を使っています。体内に新型コロナウイルスのスパイクタンパク質だけを作りだし、ウイルスに対する抗体を産生させる仕組みです。これまでのさまざまな感染症に対するワクチンは、活性を弱めたり毒素を失わせたウイルス=病原体が使われていました。そのため、ワクチン接種によって感染してしまうリスクがゼロではありませんでした。しかし、今回のmRNAワクチンはウイルスそのものを使わないのでそうしたリスクはありません。また、mRNAは役割を終えると分解されて体内に残らないため、副作用の不安も小さいといえます」

 ただし、そんな利点が同時に最大の課題になるという。

「分解されやすいということは、mRNAは扱いが難しく品質が劣化しやすいということです。今回のワクチンは投与する直前までマイナス70度以下の温度を保つ必要があるとされていて、輸送や保管の体制を整えなければなりません。そこまで低い温度を維持するには、液体窒素で満たした保管容器も必要で、莫大なコストがかかるでしょう。そうした設備やノウハウがない一般的なクリニックや病院で、広くワクチンが使えるようになるには高いハードルがあるといえます」

 まだまだ時間がかかりそうだ。

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