がんと向き合い生きていく

大腸がんの同僚を診た医師が自分の腹部にも痛みが出始め…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 その地域では中核となるB病院の総合診療科に勤務するA医師(56歳・男性)のお話です。

 患者からの信頼が厚い医師で、病院職員からもとても慕われ、B病院の「ベストドクター」に選ばれたこともあります。

 ある年の春、A医師は内科系学会のシンポジウムの演者に指名されました。専門誌からは原稿の執筆を依頼されたのですが、締め切り日になっても原稿が3本も残っていたため焦っていました。しかも、2カ月後にはひとり娘の結婚式を控えていたのでなおさらです。

 そんなある日、看護師長から相談がありました。「病棟で一緒に働いているG看護師が腹痛を訴えているから診察してほしい」というのです。

 G看護師(35歳・女性)は2カ月ほど前から便秘気味で、1カ月前からは時々左下腹部が痛むといいます。

 A医師がとりあえず処置室で腹部を診察したところ、左下腹部に筒状の塊が触れました。腸内の便がたまった状態だけならば、これほど腫れることは考えにくい……。A医師は超音波装置を運び入れ、痛む下腹部に端子を当ててみました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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