「マムシ咬傷」の治療法は医師任せ 抗血清の使用は5~6割

抗血清の使用は5~6割

 マムシに咬まれたら、すぐに病院で抗血清を注射しないと死んでしまう――。多くの人はそう思い込んでいるのではないか。しかし、実情はまったく異なるようだ。長浜バイオ大学(医療情報学)の永田宏教授に話を聞いた。

 毒ヘビに咬まれたら、治療の基本は抗血清だ。対象となるヘビから毒を採取し、これを馬に打って免疫をつくらせ、その血液から抗体成分を精製する。抗体は免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質で、乾燥した粉末がバイアル(小さなガラス瓶)に封入されて出荷される。これを生理食塩水で溶いて患者に注射すると、免疫グロブリンがヘビ毒の成分と結合して中和してくれるのだ。

 しかしマムシ咬傷は事情が少々複雑で、実際に抗血清が使われるのは、患者の5割から6割に過ぎないという。

「理由のひとつは、マムシ咬傷の2~3割が無毒か、ごく微量の毒にとどまっている無毒咬傷だからです。グレードⅠ(腫れが咬まれた箇所に限局している状態)で救急搬送されてくる患者の何割かは、時間が経過しても腫脹がほとんど拡大せず、痛みもすぐに治まっていく。そうした例は無毒咬傷と考えられます」

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