病気を近づけない体のメンテナンス

膝<下>変形性膝関節症の進行を抑える食事・運動のやり方

写真はイメージ
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 膝関節の軟骨が加齢とともにすり減って変形していく「変形性膝関節症」。軽症のうちは我慢することができていた膝痛も、中等症になるとしょっちゅう痛んだり、痛みが強くなってきて、徐々に日常生活に不便や支障が表れてくる。

 中等症期の段階で、何かやっておいた方がいいケアはあるのか。「変形性ひざ関節症 今度こそ治す方法を教えてください!」(永岡書店)の著者で「リソークリニック」(東京都世田谷区)の磐田振一郎院長(整形外科専門医)が言う。

「中等症の時期にやっておくかどうかで、とても大きな差がつくことがあります。それは自分がO脚かどうかをチェックして、O脚が進み始めていたら即座に手を打つこと。O脚が進むと、体重をかけたときに膝関節の内側ばかりに大きな力がかかるようになって、その部分の軟骨がすり減りやすくなります。だから、できるだけO脚が軽度のうちに対策を取った方がいいのです」

 O脚のチェック法は、つま先を揃えて両足をビシッと閉じて立ち、「気をつけ」の姿勢を取る。このとき左右の膝の間に指2本分以上の隙間があったら、O脚の可能性がある。加えて、普段履いている靴の底をチェックして、外側ばかりすり減っていたらO脚の可能性がかなり高い。O脚自体を治すのは難しいが、O脚の進行を予防する簡単な矯正方法がある。それは、「足の外側を高くしたインソール」を靴に入れること。インソールで足の左右外側を高くすると、膝を内側に寄せる力が働く。すると、O脚の進行を防げるし、膝関節の内側の骨がぶつかりにくくなり、軟骨の摩耗を抑えられるわけだ。

「O脚用のインソールは、靴屋さんやネット通販などで市販されています。ただ、市販品だと足の外側の高さが自分のO脚の程度に合わないケースが出てきます。そういう場合は、値段が少し高くなりますが整形外科でオーダーメードのインソールを作る手があります。また、外反母趾を併発している人はオーダーメードの方がいいでしょう」

 膝の負担を考えれば、体重が少ないに越したことはない。6キロ痩せると膝の痛みへの軽減効果が得られるとされているという。無理せず、できる範囲でダイエットも心がけよう。

 食事の工夫のポイントは「食事内容」と「食事時間」。食事内容は炭水化物や甘いものを少なめにする「糖質制限」、食事時間は「空腹の時間をたっぷりつくる」ことが大切になる。体内の脂肪はお腹がすいているときによく燃えるからだ。できるだけ間食を控え、夕食の時間をできるだけ早くするといいという。 中等症期の膝痛の人でも気軽にできるエクササイズもある。膝関節に体重を乗せないで行える筋トレのやり方はこうだ。

■座りもも上げ

①椅子に浅く座って、背筋をピンと伸ばす。足はしっかり床に着けるようにする。

②上体を真っすぐキープしながら、片方の足を上げ、太ももを10センチほど上下に素早く動かしていく。目安は左右それぞれ10回×3セットずつ。腹筋と太もも前側の筋肉が鍛えられる。

■エア自転車こぎ

①あおむけに寝て、両膝を曲げた状態で足を上げる。両手は床を押し、体を支える。

②足を上げたまま、自転車のペダルをこぐように左右の足を交互に動かしていく。目安は1回10回転×1~3セット。お腹や太ももの前側に力が入るのを意識しながら、なるべく大きな円を描くようにゆっくり回すのがコツだ。

 そして、中等症のうちから毎日の習慣にしてもらいたいのが、膝の「曲げ伸ばし」ストレッチ。膝関節の機能を弱らせないためには欠かせないという。

「膝には『膝を伸ばす筋肉』と『膝を曲げる筋肉』があるのですが、『曲げる筋肉』の方が圧倒的に強いのです。『伸ばす筋肉』の方が弱りやすく、『膝を伸ばす機能』の方が衰えやすい。ですから、膝をしっかり伸ばすストレッチを重点的に行うといいのです。最もおすすめするのは、お風呂で湯船に漬かりながらのストレッチです」

 ストレッチといっても、ゆっくり温まりながら膝を伸ばしたり曲げたりするだけでいい。足を伸ばせない箱型タイプのお風呂なら、湯船の中で正座するだけでもいい。そして、普段は足のかかとを低い台に乗せ、膝小僧を両手で押して伸ばす。このとき、つま先を体の方向に反らして行う。

「膝をよく伸ばす、よく曲げる」が、膝の寿命を長持ちさせるためのカギになるという。

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