人生に勝つ性教育講座

ベートーベンの難聴の原因 昔は先天梅毒説が有力だったが…

難聴は20代後半から徐々に悪化

 梅毒はベートーベンが生まれた当時、今では考えられないほど多くの患者がいたため、先天梅毒は珍しい病気ではなかったと考えられます。ですから、ありそうな話にも思えます。もしベートーベンがそうならば、晩期先天梅毒ということになるのでしょう。ただそれが本当なら、まだ治療薬のない時代に57歳まで生きられたかどうか疑問です。

 ちなみに、先天梅毒は妊婦検診が行われている今の日本には存在しないと思われるかもしれません。しかし、残念ながら2016年には15例、2017年には9例が報告されています。2017年までに協力を得られた13事例の分析によると、母親の国籍は12名が日本で不明が1名。年齢は18~40歳。最終学歴は大学・大学院卒1名、高卒7名。8名が既婚、5名が未婚でした。性産業に従事した経験のある人は4名、生活受給歴がある人は2名でした。妊婦検診無受診3名、不定期受診3名、定期受診7名だったということです。

 梅毒に限らず性感染症全体に言えることですが、性感染症に対する無知や経済的困窮が感染拡大につながり、それは子供たちにも影響します。性感染症で人生につまづきたくなければ、そのことを常に考えて行動することが大切です。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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