体重1~2キロ増程度だから「まぁいいか」…は大きな間違い

体重は“やや増えた”程度だが…
体重は“やや増えた”程度だが…(C)日刊ゲンダイ

 コロナ太り解消をあきらめかけている人も多いのではないか。2014年から青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導を担当し、多くのアスリートから支持を得るフィジカルトレーナー、中野ジェームズ修一さんは、体重増を放置することに警鐘を鳴らす。

「私もパーソナルトレーニング指導をしていますが、昨年の1回目の緊急事態宣言中は施設を閉めていました。再開後は、『テレワークで体力の衰えを感じるようになった』と言って入会される人が増えました」(中野さん=以下同)

 そういった人の大半は体重が1~2キロ増えた程度。コロナ禍で運動量が減っていることを考慮し、食事に関してもかなりセーブしていた。

「しかし、高性能の体組成計で測定すると筋肉量が2~3キロ落ちていた。体重1~2キロ増だけ見ると大したことないように思えますが、実は筋肉量も落ちていて、想像以上の脂肪がついていたのです」

 体重1~2キロ増でそうなのだから、本紙読者で「体重が3キロ以上増えた」という人は、かなりの脂肪をため込んでいると考えるべきだ。

「運動をせず、テレワーク中心の生活が招く弊害は主に2つあります」

 1つは高血糖。食事で取った糖は体を動かすことで使われるが、テレワークでは座位の時間が長くなり、食後の高血糖が続きやすく、糖尿病になりやすくなる。

 もう1つは、膝の筋力の低下と新陳代謝の鈍化。膝関節周辺の筋力や柔軟性が低下して膝の軟骨の摩耗が早まり、痛みが生じやすくなる。ここに肥満が加わると、膝関節へ与えるダメージは大きくなり、将来的に変形性膝関節症のリスクが増す。

「『50代まで膝が持つかな』という人が、コロナで増えた印象です」

 今から運動習慣を身につけることが大事だ。

「まずはどの程度の量の運動をするか。WHOの運動のガイドラインは、中程度の有酸素運動を週150分、週5回なら、1回30分が目安です」

 運動習慣がない人に中野さんが勧めるのが、普段やっていることに何かひとつ足す方法。1駅分歩いている人は、ダラダラ歩かず速歩にする。普段から階段を使っている人は、1階分だけ駆け上がる。また、階段の1段飛ばしもいい。速歩を普段からやっているなら、速歩+ジョギングを。

「運動は、有酸素運動と筋トレの両方を行うのが望ましい。筋トレは週2回以上を目安に、下半身のトレーニングを中心に行ってください」

 代表的なのがスクワット。筋肉量を増やすには「もう限界+1回」という負荷が必要。10回×3セットが“普通に”できるなら、回数またはセット数、あるいはその両方を増やす。動作のスピードをゆっくりにしたり、片脚スクワットにすれば強度は増す。

 下半身の筋トレは基礎代謝を増やすのに有効。じっとしていても痩せやすい体になる。スタートは今日だ。

■体重増はなぜダメ? 理由を知ることでモチベーションアップ

 IT企業の「hacomono」では、社員の健康を改善し、リモートワークにおける生産性を向上させるため、ウェルネス経営として今年4月から中野ジェームズ修一さんをコンディショニングトレーナーとして招き、毎朝20分程度のオンライングループトレーニング・ストレッチや月1回の中野さんによる座学、パーソナルトレーニング無料受講などを行っている。担当の工藤佳奈江さんが言う。

「エンジニア気質と言いますか、それまでは『仕事以外の時間をジムへ行く時間に充てる』という社員はほとんどいませんでした。朝のストレッチや座学は参加必須なのでほぼ全員が参加となるのは想定内でしたが、これを機に、社員の半分ほどがパーソナルトレーニングに通い出したのは驚きでした」

 最初の座学で中野さんは「体重はあまり増えていなくても、筋肉が落ち脂肪が増えている」と講義。社員が運動の必要性を理解し、モチベーションアップにつながったことが大きかった。

 現在は、睡眠の質を上げるために枕やマットレスを替えたり、デスクワークの姿勢をよくするために椅子を買い替えたり、食事内容を変えたりする社員が続々と現れているという。

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