後日、B子さんは私のことを思い出して手紙をくれました。そこには、Aさんの最期が書かれていました。
◇ ◇ ◇
がん医療は変わってしまったのですね。私たちは助からないと分かっていても、生きるための努力をしました。最期の蘇生は意味がないと言われても、家族もそれで納得できるように、息を引き取る時は、お別れができるように努力しましたよね。私がC病院に戻った時、医師も看護師も、ただ呼吸の止まった夫のそばに立っていただけなんです。患者の死は、ただただ、今は他人の死なんですね。
新しい薬がたくさん出て、治療法は進歩したのかもしれません。でも、私たちの時代には患者と一体感がありました。死んでいく者と、残される者の間に切なさがありました。愛情がありました。患者が亡くなった時に私は泣きました。他の患者に分からないように、時にはトイレで泣きました。先生だって泣いていたのを知っています。
がんと向き合い生きていく