新型コロナウイルスは感染者激減 このまま「インフルエンザ化」するのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの1日の感染者が314人(10月27日現在)と激減している。第6波の到来を予想する声もあるが、ワクチン接種が広まった上に治療薬も出揃い始め、緊急事態宣言の解除も相まって世間では収束ムードが高まっている。このまま季節性インフルエンザと同じような扱いになっていくのか。東邦大学名誉教授の東丸貴信氏に聞いた。

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 新型コロナ患者を受け入れているある都内の病院では、コロナ患者を受け入れ可能なベッド数が24床あるが、10月29日現在で入院しているのはわずか1人。対応に当たっていた専任スタッフも通常業務に戻りつつあるという。

「夏に猛威を振るったデルタ株がここまで急激に感染者を減らしたのは、正直なところ驚きでした。病床逼迫による自粛、ワクチン接種の拡充、ある程度有効な治療法や治療薬が確立してきたことも要因でしょうが、ウイルスが弱毒化したとか寿命が尽きたのではないかという声もあります。しかし、このまますぐに新型コロナが季節性インフルエンザと同じようになるかといえば、そうとは考えにくいといえます。もちろん、どう推移していくか未知のウイルスについて、断定的なことは言えません。ただ、新型コロナと季節性インフルエンザには、大きな違いがあるのです」

 まずは致死率が明らかに違う。季節性インフルエンザの場合、厚労省の統計では2018~19年で約1200万人が感染し、約3500人が「直接死」している。致死率は0.029%という計算になる。感染により持病が悪化する「関連死」の約1万人を含めると致死率は0.1%だ。

 一方、新型コロナはこれまで171万2947人が感染し、1万8213人が亡くなった(10月27日現在)。致死率は1.06%で、単純に比較すれば季節性インフルエンザのおよそ10倍に当たる。

「新型コロナは感染しても40~50%は無症状で、米疾病対策センター(CDC)のデータでは重症化する人の割合は約1.6~2%です。しかし、30~50代と若く健康な人でも急激に重症化して亡くなるケースがあります。季節性インフルエンザでは、症状の持続期間が3~7日で、健康な30~50代が亡くなったり重症化したりするケースはほとんどありません。また、新型コロナは発症から2カ月後でも48%の人に何らかの後遺症を認めたという報告があり、これも季節性インフルエンザとは異なっています」

 感染力にも違いがある。「1人の感染者が周囲の何人にうつすか」を数値化した基本再生産数を見ると、感染拡大が始まった頃の新型コロナは「2.2」、季節性インフルエンザは「1.3」といわれていた。この数値の差は今夏のデルタ株流行でさらに広がり、CDCは「デルタ株の感染力は水痘(基本再生産数8~12)並みに強い」との見解を発表している。うつす期間も2週間以上にわたる。

■経口治療薬も登場したが…

「ワクチンや治療薬が登場したとはいえ、空気感染力が強く致死率や重症化リスクが高い新型コロナは、安易に季節性インフルエンザと同じように扱うわけにはいかないのです。季節性インフルエンザに感染した場合、出勤停止など法律上の制限はありませんが、新型コロナにはまだ隔離や行動の制限が必要だと考えます。新型コロナに対するワクチンの効果は極めて高いことがはっきりしています。しかし、日本では国民の30%弱が未接種ですし、とりわけ20代の2回接種率は約57%と低い状況です。これから冬にかけて、寒さを避けるために換気の悪い場所での飲食や会合が増え、空気感染により、再び感染拡大してもおかしくありません」

 ワクチン接種者は、感染した場合でも、症状がなかったり、軽症で済むケースが多いという。そのため、無自覚に感染を広める人が増える可能性もある。

「新型コロナの経口治療薬の治験が進んでいますが、日本で年内に承認される可能性があるメルク社のモルヌピラビルは、入院や死亡のリスクを約50%減少させる程度と報告されています。自宅でも服用できるのが大きな利点とはいえ、薬価も高いので普及にはハードルがあるといえるでしょう」

 今冬の第6波がどんな状況になるかはわからないが、警戒を緩めるわけにはいかない。

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